お家作りに関わる斜線制限等
こんにちは
低層住居系の用途地域では建物の最高高さ限度の設定がありますが、
それ以外にも高さを制限する規定があります。
内容を出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。
前回、防火地域等についてお話させていただきました。
今回は計画する建物の位置や規模・形に関わってくる3つの斜線制限についてお話したいと思います。
・道路斜線制限
・北側斜線制限
・隣地斜線制限
計画敷地に接する道路、水路、隣地等の境界線から発生する架空の斜線による制限で、
建物の高さがこれらの斜線を超えないように計画しなければなりません。
今回も文言だけではかなり分かり辛いので図解で一つずつ説明したいと思います。
・道路斜線制限
建物の道路に面する部分の高さを制限して、道路自体の採光や通風を確保する事が目的としてあります。
道路の幅員、高低差が関わってきます。
例として敷地と道路、計画する建物の状況を描いてみました。 ↓
道路斜線を引くスタート地点は道路の対向側の境界線からになります。
ここから一定の勾配で計画敷地に向かって引いた線が道路斜線となります。
斜線の勾配は、用途地域が関係しており、
住居系地域で 1:1.25
商業系・工業系地域で 1:1.5
それ以外の地域 1:1.25 若しくは 1:1.5 (役所で確認要)
の、角度の勾配で斜線が発生します。
建物がこの斜線に引っかからないようにしなければなりません。
上の図の敷地が用途地域の住居系に属していた場合、この計画では神も御上も建築許可を出しません。なんてこったい。
では、解決策を上げてみます。
※制限が厳しい住居系の1:1.25勾配でのみ説明したいと思います。
解決策その1
屋根勾配の向きを逆向きにしました。
法的にはクリアになるのですが、道路側からの外観が変わってしまう結果になります。
屋根勾配を緩やかにするという手もありますが、
図を1寸勾配で書いてるので水捌けも考えてこれ以上緩やかにするのはあまりよろしくありません。
解決策その2
敷地に接する道路境界線から建物までの距離を、
1.5mから0.5mセットバックして2mにする事で斜線下に納まるようにしました。
外観は変わらないのですが、建物の位置を動かす事になるので反対側のスペースが削られる事になります。
お庭等計画している場合には支障をきたす場合があるかもしれません。
解決策その3
建物の最高高さを7mから6.6mに下げました。
1階・2階を20cmずつ横架材を下げたかたちになりますが。。。この案はできれば避けたいところです。
天井が低くなるという事ではないのですが、梁と天井までの懐のスペースが狭くなってしまいます。
天井裏には給排水管や電気配線、排気通路等が梁をかわして納まっているのである程度スペースは確保したいところですね。
と、まぁ色々解決策を述べてきたのですが、
外観を変える事なく、建物位置も動かす事なく、高さも変える必要のない第4の解決策があります。
計画では敷地に接する道路境界線から建物を1.5m後退させています。
その場合、前面道路の境界線から建物までの最少距離(後退距離)の分、
道路斜線制限の起点が前面道路の対向地側の境界線から外側に移動できる緩和規定があります。
最初に言えや。。。と、聞こえてきそうな感じではありますが、(笑)
敷地と道路にもっと高低差がある場合にはこれでも斜線をかわせない場合もあります。
そこで上記の3つの解決策を駆使して法的にクリアに持ってく事になるという事ですね。
ちなみに角地の場合 ↓ こんなとき
稀ではなく、よくある光景です。
この場合は北側道路、東側道路の両方からの道路斜線制限を満足させる必要があります。
その点でいえば不利な敷地ではありますが、救済措置として角地による建蔽率の緩和が使えます。
用途地域で設定されている建築面積の制限に +10%追加できるというものです。
ただ、容積率の限度は変わらないので、どちらかといえば平屋向き。と、言えるのかもしれません。
勿論、2階建ての住宅でも斜線制限をクリアすれば全く問題ありません。
続きまして~。。。
・北側斜線制限
北側隣地の日照の悪化を防ぐことを目的とした斜線制限です。
用途地域では、
第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域の4地域で北側斜線の検討が必要です。
熊本市の場合は、低層住居専用地域のみの設定となります。
当然ながら、道路斜線制限等も同時に満足させる必要があります。
上記の道路斜線制限で使った図で検討してみましょう。
北側隣地境界線から垂直に5mの高さをとり、
その地点から勾配1:1.25の斜線勾配以下に建物の高さを計画しなさいよという制限です。
はい。現状ではアウトでございます。(笑)
この場合、道路斜線制限の解決策として挙げた1、2、3などの方法で法的にクリアするようにします。
残念ながら道路斜線で使った後退距離の緩和等はありません。
プランが確定していた場合は、建物位置、屋根勾配の向き、高さを微調整して落としどころを探す事になります。
加えて、北側の敷地が計画地よりも低い場合は高低差のないものとして北側斜線制限の計算をする事ができます。
・隣地斜線制限
隣人の日照や採光、通風等、良好な環境を保つための目的があります。
隣地斜線に関してはもう補足と言ってもいいかもしれません。
隣地斜線制限の検討は、用途地域によって定められています。
住居系では、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域が該当します。
隣地境界線から垂直に20mの高さを取り、
その地点から勾配1:1.25の斜線勾配以下に計画しなければなりません。
低層住居2種が省かれているのは最高高さ限度が設定されているからです。
商業系・工業系も全地域で適応となりますが、
上記の20mを30mに、勾配1:1.25を1:2.5に置き換えたものになります。(図では省略してます)
それ以外の地域では、上記2パターンのどちらかになり、役所で要確認となります。
一応、説明はさせてはいただきましたが。。。
僕達は木造一戸建ての注文住宅・建売住宅をメインに取り扱っているので、
正直なところ隣地斜線に関してはあまり考えた事がありません。(笑)
だいたい、こんな感じです。
以上、斜線制限等を説明させていただきました。
敷地には実は目に見えない線が走っていることがお分かりいただけたと思います。
いや、でもよく目を凝らしてみると見えるかもしれません。。。よ?